シェールガスが地下数千メートルに大量に存在することは、かなり以前から解っていました。しかし、地下数百メートルに存在する在来型の天然ガスは採掘できても、地下数千メートルに大量に存在するシェールガスを採掘することは絶対に不可能と思われていました。
何故なら、シェールガスはナノレベルで岩盤の隙間に気体や液体で存在しているからです。
しかし、その常識を覆したのは米国の中小企業の技術革新でした。
それまでは考えられなかった水平掘りや水圧破砕で、地下数千メートルに大量に存在するシェールガスの掘削を可能にしたのです。
この米国の中小企業の技術革新によって、あと数十年で枯渇すると考えられていた化石燃料の寿命が少なくとも400年は延びたと現在は考えられています。
そして、シェールガスの埋蔵量が多い米国では、既に天然ガスの価格が下落しています。
今後、燃料や原料の価格が劇的に安くなれば、石油化学工業を始めとした米国の製造業が復活するかもしれないのです。
つまり、海外に出て行った米国の製造業が米国内に回帰する可能性が出て来た訳ですね。
それは製造業の工場が米国内に建設され雇用を生むことにも繋がります。
更に、米国はLNG(液化天然ガス)の輸入国から輸出国に変身し、貿易収支の赤字国から黒字国へ変身する可能性も見えてきました。
オバマ大統領は「我々の足元には100年分のシェールが眠っている。このまま開発すれば、いずれエネルギー輸入量を半分にでき、シェールガスだけで60万人を雇用できるのです」と言っています。
アメリカから始まった新しいエネルギー革命は世界の経済のみならず、国家間のパワーバランスまで変えつつあります。そして、19世紀の石炭・20世紀の石油に次いで21世紀はシェールの世紀になると予測する経済学者も出て来ました。
アベノミクスで円高修正と株高を喜ぶ日本経済ですが、現在のドル高円安のトレンドはアベノミクスだけの効果ではなくてシェールガスによる世界経済の変革を折り込み始めたのかもしれません。つまり、強いドルの復活です。
そして、シェールガスによる世界経済の変革は、日本経済にも好影響を与えます。
まず、世界で一番高価なLNG(液化天然ガス)を輸入している我が国のLNGの調達先の多様化です。
そして、LNGの調達先の多様化によってコストを下げることが期待されます。
また、燃料や原料の価格が安くなることで米国にエチレン工場を持つ日本の化学メーカー
は恩恵を受けますし、中長期的には航空機燃料やガソリンの値下がりで空運・海運・自動車・物流などの様々な企業が恩恵を受ける可能性があります。更に、シェールガス掘削関連や掘削に大量に使われる水処理の技術は日本の得意分野でもあります。