これまで採掘ができなかったシェールガスの商業生産が始まったことでエネルギーの供給体制に劇的な革新を与えただけではなくて、様々な分野に革命的な影響が及ぶと考えられています。更に、現在、全く考えられていない分野にまで、今後、好影響が及ぶとも期待されているのです。
つまり、シェールガスの商業生産が始まったことで在来型と非在来型の化石燃料の寿命は少なくとも400年は延びたと言われており、その影響の大きさから18世紀の産業革命に匹敵する革命になると期待されています。
また、その影響は「エネルギー」分野だけに留まらず、「経済」「金融」「石油化学」「掘削技術」などに広範囲の影響を与え始めています。それぞれの分野への影響を見ることで、シェールガス革命と言われる所以を見ていきます。
シェールガスの商業生産が始まったことで、エネルギーの供給体制に革命的な変革が起きることは間違いありません。
例えば、地球上で採掘が可能だと考えられている天然ガスの総量は、これまでの在来型ガスを1とするとシェールガスは20に成ると考えられています。つまり、天然ガスの資源量は20倍に成る訳ですね。しかも、現在の技術では掘削できませんが、将来掘削の可能性がある天然ガスの量が別に60も有るのです。
また、同様にオイルも採掘が可能だと考えられている量は、シェールオイルを加えることで8倍に膨らむと考えられています。
その結果、在来型と非在来型の化石燃料の寿命は少なくとも400年は延びたと言われているのです。
従って、シェールガス開発によって世界のエネルギー地図は大きく変わることになるでしょう。
まず、現在、世界最大の天然ガス輸入国であるアメリカが、2020年には天然ガスの輸出国になると予想されています。この影響を最も受けるのは世界最大の天然ガス産出国のロシアです。欧州ではロシア産の天然ガスへの依存度が高い訳ですが、最近はシェールガスによる天然ガス価格の下落でカタールが安い天然ガスを欧州に供給し始めました。
そこで、ロシアはアジア市場に供給先を求めていますが、中国は自国のガス開発を優先し日本は北米やオーストラリアに目を向けています。
つまり、現在の世界の天然ガス市場は、日の出の勢いの北米に対して焦る中東と戸惑うロシアという構図なのです。
シェールガス開発の「経済」「金融」への影響は計り知れませんが、最も特徴的なことはアメリカ経済の本格的な復活です。
特に、アメリカの製造業に劇的な変化が起こることが期待されています。つまり、シェールガス開発で安価なエネルギーを手に入れることで、アメリカの製造業が復活し世界中に散らばっているアメリカ企業の工場がアメリカ本土に回帰する可能性が生まれています。
その結果、アメリカの貿易収支や経常収支に影響を与え、アメリカが黒字国に復活する可能性も指摘されています。
そして、強いアメリカ経済の復活は強いドルの復活も意味します。
現在、アベノミクスの効果で円安と株高を喜ぶ日本経済ですが、この円安はドル高の大きなトレンド変化の始まりかもしれません。
それを裏付ける様に、金価格が静かに暴落しています。
「石油化学」業界や「掘削技術」業界への好影響は、もっとダイレクトです。まず、「石油化学」業界はシェールガス開発による原材料価格の下落で収益増が期待できるだけではなく、新しい技術革新の大きなチャンスと捉えられています。
同様に「掘削技術」業界も足元は北米での需要増が見込まれますが、中長期的には世界的なシェールガス開発競争で大きなビジネスチャンスが待っていると言えます。
特に、日米の「石油化学」業界や「掘削技術」業界への好影響が大きいことは言うまでもありません。
また、シェールガス開発には大量の水の供給が不可欠なことから、水ビジネスへのニーズが高まることが考えられます。更に、シェールガス開発の副作用として環境問題がありますが、水と環境は日本企業が強い分野です。