ヨーロッパ諸国の対応



ヨーロッパ諸国の対応

先行するポーランド追随するイギリス・リトアニア・ウクライナ

シェールガスに対するポーランドとフランスの対応は対照的シェールガスに対するポーランドとフランスの対応は対照的

EIA(アメリカエネルギー情報局)の発表によりますと、ヨーロッパ諸国でシェールガスの推定埋蔵量が多いのはポーランドの5.3兆立方メートルとフランスの5.1兆立方メートルです。しかし、両国のシェールガス開発に対する対応は対照的です。
シェールガスの開発に積極的なポーランドは、2010年からアメリカの石油メジャーのエクソンモービルやシェブロンなどが参加して開発を進めてきました。
また、日本の三井物産も2011年6月にポーランドで10鉱区のシェールガス権益を獲得しています。

トゥスク首相は「大きな投資の始まりだ」と述べているトゥスク首相は「大きな投資の始まりだ」と述べている

ポーランド政府は2020年までに総額1千億ズロチ(約2兆8,000億円)をエネルギー部門に投資する計画を発表し、トゥスク首相は「大きな投資の始まりだ」と述べています。
現在、ポーランドは石油輸入量の95%・天然ガス輸入量の90%をロシアに依存しているため、ロシアに対する交渉力を持つ点でもシェールガスの開発は急務と考えられたからです。
また、同国にとってはエネルギーの供給源の多様化も進めなければならない課題と言えます。
しかし、早くもシェールガス開発は暗礁に乗り上げています。
まず、2012年4月にポーランドの国立地質調査所がシェールガスの埋蔵量を、従来EIA(アメリカエネルギー情報局)が発表していた5.3兆立方メートルから約1/10に下方修正しました。つまり、同国に豊富にあると考えられてきたシェールガスの埋蔵量が根底から崩れた訳ですね。
そして、追い討ちを掛けたのは、2012年6月にアメリカの石油メジャーのエクソンモービルが、同国のシェールガス開発からの撤退を発表したことでした。同社はシェールガスの生産量が商業生産の量に達しなかったと発表しています。

イギリスではランカシャー地方で試掘がスタートしたイギリスではランカシャー地方で試掘がスタートした

一方、シェールガス開発に舵を切るイギリスではクアドリラ・リソーシズがランカシャー地方で試掘を開始しています。また、イギリス政府も条件付でシェールガスの「水圧破砕」を認可しました。
また、リトアニアやウクライナでは、シェールガス開発の探鉱ライセンスの入札が開始されています。リトアニアやウクライナもポーランドと同様に石油や天然ガスの供給をロシアに依存しており、エネルギー源の多様化を進めなければならないという事情がある訳です。

開発禁止を決めたフランスとブルガリア

フランスではシェールガスの開発を事実上禁止したフランスではシェールガスの開発を事実上禁止した

一方、EIA(アメリカエネルギー情報局)のシェールガス推定埋蔵量でポーランドの5.3兆立方メートルに次ぐと発表されているフランスは、ポーランドとは全く逆の動きを見せています。
フランス政府は2011年7月に他国に先駆けて「水圧破砕による非在来型資源の開発・採掘を禁じる法」を制定して、シェールガスの開発を事実上禁止しました。
フランス政府が水圧破砕などを用いるシェールガスの開発を禁止した背景には、環境破壊への懸念が強いと言われています。

原子力発電を推進する政治的な思惑もあると見られてる原子力発電を推進する政治的な思惑もあると見られてる

しかし、原子力発電に依存する同国のエネルギー政策が影響しているという見方も有力です。つまり、原子力発電を推進するために「新たにコストの安い化石燃料が登場するのは歓迎できない」という政治的な思惑もあると見られています。
只、就任したばかりのオランド大統領は「水圧破砕を用いない掘削が可能な場合は検討の余地がある」と立場を修正しています。
また、ブルガリアでも2012年1月にシェールガス掘削の水圧破砕が禁止されています。
一方、EUの大国であるドイツは再生可能エネルギーへの依存を強めていますが、シェールガス開発については水圧破砕の環境への影響を調査中で慎重な姿勢を見せています。